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I.はじめに
神経因性膀胱の治療というと,これまでは外傷性脊損患者の排尿障害に対する治療と思われるほど多くの業績があるのに反し,その他の原因に基づく神経因性膀胱の治療に関する報告はきわめて少ない1)。豊富な外傷性脊損患者に関する業績を踏まえて施行している神経因性膀胱のわれわれの治療法を述べたい。
神経因性膀胱の治療の目的は,できるだけ正常に近い排尿状態,すなわち"balanced bladder"と呼ばれる状態にすることである。balanced bladderとは,充分な膀胱容量を有し,残尿量が少なく,膀胱尿管逆流現象が認められない状態をいう。治療には原因療法と対症療法とがあり,原因療法およびそれに準ずる治療法があれば,それをまず優先すべきである。しかし,現在のところ原因療法のない神経系疾患も少なくないため,神経因性膀胱の治療の主体は対症療法である。対症療法を行なううえにおいては,無緊張膀胱,膀胱の無抑制収縮や排尿筋外尿道括約筋協調不全などの排尿障害の病態をつぶさにとらえ,できるだけ早期に適切な対処を行なうことが必要である。このことによって尿路感染や膀胱の過伸展のごとく二次的な排尿障害の悪化要因を予防することが可能である。膀胱機能障害をきたした脊損患者の主たる死因は現在でも腎盂腎炎による腎機能障害であることに変わりはない2)。
Abstract
We summerized the current view of treatment of neurogenic bladder as follows.
1. The purpose of the treatment is to change the bladder dysfunction into the stage of so-called balanced bladder.
2. To begin with the etiological treatment should be considered, however, at the same, the symptomatic treatment is often necessary in order to avoid the irreversible organic lower urinary tract complications.
3. There are conservative as well as surgical therapies in symptomatic treatment.
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