手術手技 基本的な手術・16
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井川 靖彦
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1信州大学医学部
pp.649-650
発行日 1995年8月20日
Published Date 1995/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901567
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筆者らは,膀胱拡大術の際に,回腸,S状結腸または胃を利用しているが,どの臓器を利用するかの選択およびどの程度膀胱を切除するかの判断は,主に原因疾患および性別によって決定している。例えば,二分脊椎に伴う神経因性膀胱(低コンプライアンス膀胱)では,クラム法に準じて,脱管腔化したS状結腸を利用して膀胱拡大術を行うことが多い。特に,そのなかでも下肢に運動障害のある女性患者では,膀胱拡大術と同時に,新たな自己導尿路として,Mitrofanoff法にて虫垂または狭小化回腸を利用した禁制ストーマを臍部に造設している。この場合,拡大に利用したS状結腸壁に粘膜下トンネル法で禁制膀ストーマの導管部を吻合するため,拡大した膀胱が臍部付近まで十分に届くようにする必要がある。そのためには,筆者らの経験では,成人で約30cmのS状結腸の遊離が必要である。本術式は臍部を露出するだけで坐位による自己導尿が可能となる利点がある。また,下腹部ではなく,臍部に禁制ストーマを設けることは,美容上,ストーマが膀の奥に隠れて見えないことや,肥満体の患者でもストーマ造設が比較的容易で,臍のくぼみを利用して導尿が容易にできることなどの利点もあり,有用性が高いと考える。
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