Coffee Break
癌告知を実践して
三沢 一道
pp.13
発行日 1993年3月30日
Published Date 1993/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900826
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癌の意味が理解できない幼児や老人痴呆患者などを除いて,全悪性腫瘍患者に告知を行っている。インフォームド・コンセントの重要性が強調されている現在,つらい手術や化学療法がなぜ必要なのかを患者が理解し,積極的に治療にとりくむためには,癌の告知は絶対必要と考えるからである。また,予後不良であっても,自らの病状を認識し,やり残したことを解決する時間的余裕を持たせるために,やはり告知する。しかし各々の患者は病態や性格,家庭・社会環境が異なるのだから,事務的かつ一様に告知するわけにもいかず,その実際はなかなか難しい。当然,告知後の精神的支持が最も重要であることは言うまでもなく,当科では看護婦も婦長を中心に積極的に精神的ケアに取り組んでいる。また院内で運営されている「死の臨床を学ぶ会」に問題を提起し,模索も行ってきた。それでも問題は尽きず,頭の痛いことも多いが,告知の必要性をより実感できる今日この頃である。
近年エイズの流行が巷でいわれ,いずれは泌尿器科患者のなかにも,多くのHIV陽性者が発見できるであろう。エイズであれば,殆どの医師は患者に告知するであろうから,社会的条件が異なるとはいえ,同様に重大な疾患として「癌を告知すべきか否か」などという論争は吹き飛ばされてしまうかもしれない。ともあれ癌の告知には細心の注意と患者の性格把握が必要であるとは勿論であるが,患者全員に最低100項目に及ぶ性格テストを施行するわけにもいくまい。
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