Coffee break
癌告知雑感
魚住 二郎
pp.31
発行日 1995年3月30日
Published Date 1995/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901419
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医療現場で癌告知の問題が話題にのぼるようになって久しい。健康な患者は「もし癌だったらはっきり言って下さい」と告知を望み,良心的な医者もまた苦しい言い訳をしながら一時を糊塗するよりも,告知をした方が適切な治療が円滑に行えるという告知のプラス面を十分認識している。しかしながら,行政改革や規制緩和の問題と同様で,総論賛成,各論反対というのが現実である。治癒切除例に癌告知を行うことは比較的気楽な仕事ではあるが,その患者が2〜3年後に再発という確率の小さなくじを引き当てて戻ってきた時の対応は容易ではない。ましてや,手術不能例での告知はまさに死の宣告になってしまう。治癒切除が可能と判断し,手術を渋る患者を説明する意味での告知を行ったものの,術前精査で切除不能の転移巣が見つかった例や,進歩的な考えの若い主治医が積極的に告知を行ったが,その主治医は転勤になりあとには癌に苦しむ患者と嘘のつけない気の弱い後任の主治医が残されてしまった例もある。
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