交見室
腎細胞癌の動注併用一時的阻血療法を読んで,他
藤岡 知昭
1
1岩手医科大学
pp.902-904
発行日 1991年10月20日
Published Date 1991/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900466
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本誌45巻4号に掲載された村橋勲先生らの標記論文を,腎癌に対する免疫療法に感心を持っている一人として興味深く拝読しましたので,感想を述べさせていただきます.
この論文では,動注併用一時的阻血療法による免疫能の増強の可能性について,末梢血リンパ球の変動および組織内リンパ球浸潤を重視されております.すなわち,阻血療法後に一時的に末梢血リンパ球が減少し,そのリンパ球の減少の機序として,組織内にリンパ球が集合するためと考察されております.しかし,組織内リンパ球浸潤を検討した22例すべてでその浸潤を認める反面,各種動注群間および阻血療法を行わなかった例との間にきわだった差はなく,さらに腎腫瘍の組織中リンパ球サブセットの検討では特定のリンパ球のみでなく全部の種類が集合浸潤したと述べております.これらの現象および一部の症例でのT細胞での増加,好酸球の増加,リンパ球幼若化反応の上昇より果たして阻血療法により免疫能が増強された証拠とするのは無理があるように思われますがいかがでしょうか.
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