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編集後記
大家 基嗣
pp.672
発行日 2018年7月20日
Published Date 2018/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206348
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本誌2018年4月号の編集後記で,英国の作家カズオ・イシグロ氏の処女長編小説『遠い山なみの光』(ハヤカワ文庫,小野寺健訳)で表現されている,戦中・戦後を過ごした女性の楽観性と思い込みの強さ,異国への憧れについて触れさせていただきました.
お笑い芸人である矢部太郎氏の書いた漫画『大家さんと僕』(新潮社)がベストセラーになり,第22回手塚治虫文化賞を受賞しました.87歳の大家さんの自宅の2階に間借りした矢部氏と大家さんとの心温まる交流を描いたお話です.大家さんは小柄でとても上品な方.干しっぱなしの洗濯物を取り入れてくれるなどの世話を焼いてくれます.家賃を手渡しに行った際に部屋に上げてお茶をくれました.話題に困って,男性のタイプを聞いてみたところ,帰ってきた答えが“マッカーサー元帥”でした.「哀愁があってどこか遠くへ連れてってくれそうで」というのが理由です.『遠い山なみの光』で描出されていた戦争を生きた女性の感覚を再認識しました.
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