- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
第29回日本腎泌尿器疾患予防医学研究会は2021年1月28〜29日に浮村理教授(京都府立医科大学)の会長のもと,ハイブリッド形式で行われ,私は内藤裕二先生(京都府立医科大学消化器内科学)の特別講演「日本人の腸内細菌叢解析から見えてきた酪酸菌の秘密」の座長を拝命いたしました.腸内細菌叢はさまざまな疾患と関連し,良好な腸内細菌叢の保持が疾病予防につながります.内藤先生のご講演では,日本一百寿者の多い京丹後市在住高齢者の腸内フローラの解析結果が述べられました.京都市内の高齢者と比較すると,多い菌の上位4種が酪酸産生菌であったそうです.さらに,食事調査では食物繊維を多く摂取している傾向がわかりました.食物繊維を餌とした発酵によって酪酸産生菌が酪酸を産生します.酪酸は自己免疫の暴走を抑える制御性T細胞(Treg)の誘導物質です.合点がいきました.
「長寿の陰に腸内細菌あり」といったところでしょうか.内藤先生のご講演の後には質問が飛び交いました.渡邉泱名誉教授(京都府立医科大学・明治国際医療大学)からは,「日本人の国民的な穏やかさ,協調性は腸内細菌が原因ではないのか?」とのご指摘をいただきました.ご講演によりますと,個人の腸内細菌叢は3歳くらいまでに完成するそうです.母子環境の影響が大きく,連綿と伝わってきた日本人の特徴がここに存在すると考えると,日本文化の根幹に関わる現象に思えてきました.内藤先生は『京丹後市の高齢者は性格の穏やかな方ばかりで,皆さんが「自分が病気になって家族に負担をかけたくない」ことばかりを強調される』と答えていらっしゃいました.現在,丹後医療圏に勤められている沖原宏治先生(京都府立医科大学附属北部医療センター)からは「オナラ」についてコメントがあり,『砕石位をとって膀胱鏡を行うときなど,マスク越しに「オナラ」の匂いを嗅ぐときがあるが,白菜の漬物の匂いで全く臭くない.自分の臭い「オナラ」とは全く違う』とおっしゃったので,場内は爆笑でした.内藤先生は自らの「オナラ」の匂いで健康管理を行っているそうです.
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.