特集 前立腺肥大症に対する手術─古くて新しい泌尿器科の標準治療
企画にあたって
小島 祥敬
1
1福島県立医科大学医学部泌尿器科学講座
pp.567
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206053
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この時期,新しく泌尿器科医となった若い後期研修医の先生たちが,膀胱鏡の操作に悪戦苦闘している光景をよく目にします.私が若い頃も,まずは膀胱鏡検査において,特に男性への無理のない内視鏡の挿入と,膀胱内のローテーションが理解できるようになれば,次のステップに進めると指導されました.その次のステップの1つが,経尿道的前立腺切除術(transurethral resection of the prostate : TURP)でした.
私がTURPを始めた20年前は,先輩医師たちに,「昔はモニターなんかなかったから,後ろから執刀医の手や肩の動きを見て手術を覚えたものだ」とか,「ときどき執刀医に内視鏡をのぞかせてもらったけど,血だらけで結局何もわからなかった」と,手術習得の難しさを武勇伝のように語られ,手術用モニター登場による革命的変化を強調されたものでした.そして,この20年の間に,前立腺肥大症手術もさらなる変化を遂げました.機器開発の進歩とともに,多くの新しい術式が開発され,最近では有効性のエビデンスが数々の大規模RCTにより蓄積されつつあります.しかしながら,どの術式にも一長一短がありますし,TURPは今でも標準術式であり,必ずしも劣った術式というわけではありません.本年4月に改訂された『男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン』にも,「それぞれの術式にはそれぞれの特徴があり,手術治療の術式選択は,前立腺肥大症の特性,前立腺以外の患者特性,医療施設の設備,術者の習熟度などを考慮して行う必要がある」と記載されています.
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