特集 専門医として知っておきたい 性分化疾患の基礎知識
企画にあたって
小島 祥敬
1
1福島県立医科大学医学部泌尿器科学講座
pp.745
発行日 2017年9月20日
Published Date 2017/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206088
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私が泌尿器科医になろうと思ったきっかけは,学生時代に性分化機構に魅せられたことでした.1990年にSry(sex determining region on Y)遺伝子がY染色体の短腕に同定され,翌年にマウスXX個体の受精卵にSryを遺伝子導入することにより,性転換が引き起こされたことから,Sryが精巣決定因子であることが報告されました.私が医学部5年生であった1993年に,性分化疾患の講義で初めて知る疾患に驚き,さらにSry遺伝子の発見によりその発症機構が解明される可能性があると聴いて,神秘的な性分化の世界に引き込まれたことを今でもはっきり覚えています.
泌尿器科医になり,大学院に行くことを希望しましたが叶わず,臨床研究医という立場で大学外の研究機関を自ら探し研究するよう命じられました.苦労した挙句,基礎生物学研究所教授(現九州大学教授)の諸橋憲一郎先生に辿り着き,自ら手紙を書き研究することを許可されました.そして,1997年から諸橋教授のもとで性分化機構についての研究をしました.残念ながら研究は完遂できず,中途半端な状態で涙を飲んで臨床医に戻りましたが,間違いなく現在の研究や臨床に対する思考性は,あのときに養われたと信じています.
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