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私が泌尿器科医になった当時,最も感動した手術のひとつは,膀胱尿管逆流に対する(経尿道的)内視鏡的注入療法でした。小さなお子さんに傷を作らずに手術をするという術式が,研修医の私にとっては魔法のような手術でした。ご両親が喜んで帰られる姿を見て,画期的な手術だと思いました。しかしながら,当時学会では,小児に対する手術は開放手術で行うべきであるとの意見が主流で,内視鏡手術は受け入れられ難い時代でした。しかし20年の月日がたち,現在では内視鏡的注入療法は膀胱尿管逆流に対して多くの施設で行われるようになりました。そして今や時代とともに,診断から治療,尿路疾患から性腺疾患,摘除術から形成術,経尿道的手術から腹腔鏡手術や気膀胱手術,そして単孔式腹腔鏡手術やロボット支援手術と,小児泌尿器科領域において幅広く内視鏡の技術が応用されています。
小児内視鏡手術の利点は,傷が小さい(ない)ことや,術後疼痛が少なく回復期間が短いことです。例えば小児腹腔鏡手術の場合,形成術はもちろんのこと,摘除術でも成人に比べて摘出臓器が小さいため創の拡張が不要であり,さらに臍を有効に使うことにより審美性に優れます。また開放手術では,執刀医以外は小児の狭い術野の観察が困難もしくは不十分であるのに対して,内視鏡手術では,複数の医師(指導医・執刀医・研修医・麻酔医)・看護師・学生がモニターを通して同一の視野を共有できます。手術記録をビデオに録画・保存することにより,技術の向上が期待できます。そして学生や研修医の教育のみならず,小児泌尿器科疾患という特殊な疾患を専門としようとする,次世代を担う若い医師の育成に適していると思います。一方,小児内視鏡手術は低侵襲といえども万能手術ではなく,成人と異なり開放手術を必ずしも凌駕するとは言い切れません。特に腹腔鏡手術は,手術難易度が高いことから手術時間も長く,技術習得には十分な教育システムが必要とされます。また長期成績についても今後の結果が待たれるところです。さらなる医療機器開発の進歩も期待されます。
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