特集 前立腺肥大症の薬物療法─使い分けのポイント
企画にあたって
小島 祥敬
1
1福島県立医科大学医学部泌尿器科学講座
pp.389
発行日 2016年5月20日
Published Date 2016/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413205705
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前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia : BPH)の病態には,機能的閉塞と機械的閉塞の2つがあるとされてきました.前者は,交感神経刺激による前立腺平滑筋の過緊張により尿道の動的な閉塞がもたらされ,排尿障害を来すという考え方です.この中心的役割を担うのがα1受容体であり,BPHに対する第一選択薬としてα1遮断薬が使われています.一方後者は,前立腺の腫大による物理的な尿道の圧迫により排尿障害を来すという考え方です.前立腺の増殖には,アンドロゲンがある一定の役割を担っていることから,古くは抗アンドロゲン薬が,最近では5α還元酵素阻害薬が使われるようになっています.
しかし,BPHがもたらす男性下部尿路症状は,これらの病態のみでは説明できません.BPH患者は,閉塞による排尿症状(障害)のみならず,蓄尿症状(障害)も伴います.BPHの病態は複雑で,症状も患者さんごとに多種多様です.今日では下部尿路症状(障害)に対する薬剤選択肢が増え,患者さんごとの病態や症状に応じてその使い分けをする必要もあります.例えば,PDE5阻害薬がBPHに対する第一選択薬として,α1遮断薬と同等の位置づけになりつつあります.また,α1遮断薬やPDE5阻害薬に加えて,過活動膀胱を伴う場合には抗コリン薬やβ3作動薬を,前立腺容量が大きい場合には5α還元酵素阻害薬を併用したり,植物エキス,生薬,漢方薬などの代替療法が有効な場合があります.さらに,BPHに低活動膀胱を伴う場合の治療,合併する性機能障害についての知識も薬物療法を行ううえでは重要です.
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