Japanese
English
綜説
Cisplatinについて
Cisplatin
川井 博
1
Hiroshi Kawai
1
1日本医科大学泌尿器科学教室
1Department of Urology, Nippon Medical School
pp.111-120
発行日 1981年2月20日
Published Date 1981/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203092
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
今日癌の化学療法剤としては極めて多数の薬剤が臨床的に応用されているが,cisplatinのように白金という重金属を含む薬剤は見当らない点で,大変ユニークな癌治療剤といえる。
この薬がRosenberg(1965)1)によつて大腸菌に対して抗菌力を示すことが発見され,その薬理作用を追究中に,実験動物の移植腫瘍に対して抗腫瘍効果のあることが判明して注目されるようになつた。しかし,何分にもこの薬剤は後述するように腎毒性が強く,聴覚障害なども起こしやすいためになかなか臨床的には利用し難い面があつたが,多くの研究者により本剤の投与方法,投与経路,投与量と投与間隔あるいは十分なhydrationを投与前・中に行なつたり,利尿剤の併用などで最近では副作用の点では心配なく投与し得る薬剤となつた。本剤は比較的広い抗腫瘍スペクトラムを示すので,ここ数年の内に極めて多数のphaseⅠ,Ⅱ,Ⅲの研究報告を見ることができる。本剤に関しては本誌の読者の方々も概略は御承知のことと思うが,ここにcisplatinを紹介する意味で,基礎的研究経緯の一部と本剤の泌尿器科領域悪性腫瘍の治療成績について文献的考察を述べる。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.