JIM臨床画像コレクション
Cisplatin誘発Raynaud現象
酒見 英太
1
1国立京都病院総合内科
pp.1078
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100766
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症例は64歳の男性で,2002年3月,中咽頭癌にて術前化学療法(CDDP+5FU)を受けた4日後から,両前腕~手指のみに,冷感(+)痛み(-)のチアノーゼをきたした(表紙写真).化学療法後の食思低下以外,全身症状なく,血圧は正常で,橈骨動脈も触知良好であった.CBC,D-dimer,APTT,抗カルジオリピン抗体,抗核抗体,免疫複合体,ANCA,クリオグロブリンはすべて正常範囲であった.このチアノーゼはその後徐々に消退し,約1週間で消失した.術後,再び同じ化学療法4コースの追加を受けた6~7月には気候が暖かくなっていたせいか,同様のチアノーゼはきたさなかった.なお,本症例は2003年1月に心室細動にて急死している.
Cisplatinをベースとした癌化学療法の合併症として,心筋梗塞,狭心症,脳梗塞などの動脈合併症は知られており,本症例の死因とも関係があったかもしれない.一方,cisplatin+vinblastin+bleomycin投与後に,細動脈が寒冷刺激に対して過剰反応,すなわち長時間の強い収縮をきたし,一部にRaynaud現象を呈することも確かめられており,本症例での上肢における広範囲の血管収縮性チアノーゼは,この機序によるものであったと考えられる.
(文献検索のキーワード:cisplatin, vasospasm, vascular toxicity, Raynaud phenomenon)
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