文献抄録
無処置膀胱癌31症例の剖検/同時発生の両側性腎癌
pp.56,72
発行日 1969年1月20日
Published Date 1969/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200603
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全く無治療の膀胱癌症例の剖検に関するまとまつた報告は極めて少ないので,著者らは1927年以来BostonPondville病院における31例の剖検所見について検討を加えている。剖検例は年齢的には47歳から89歳までにわたり大部分が70歳台であつた。著者の統計で腫瘍の発生時期を尿路症状(血尿・頻尿)出現として死亡までの期間を計測しているが,最長9年に及ぶものもあるが,3年以上のもの5例で,その他症例の3分の2は1年以内であつた。
腫瘍の細胞型については18例は移行上皮癌,10例は扁平上皮癌,未分化の腺癌3例であつた。転移について見ると腫瘍の近接臓器組織へ浸潤性転移を示したもの20例で,その内13症例は遠隔転移も認められた。また浸潤性転移のない11例については7症例に遠隔転移が証明された。腫瘍の組織悪性度(Grade)と細胞型(Type)と転移頻度との相関はとくに認められなかつた。転移組織としては所属淋巴節が20例中16例でその他は肺7,肝5,骨5等になつている。淋巴節のみに転移を示したものは8例。転移発生頻度は腫瘍細胞型よりむしろ細胞の核分裂の寡多に関係していると考えられた。腫瘍の膀胱壁浸潤度と遠隔転移の関係はJe-wettおよびStrongの報告と同様の所見であつた。全症例中まつたくいずれの部位にも転移の見られたかつたものは4例で,移行上皮癌2,扁平上皮・未分化癌の各1例であつた。
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