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7月の下旬に札幌で講演をする機会を頂戴しました。猛暑の続く東京から脱出して,おそらく私の脳細胞は活性化されていたような気がします。日頃なんとなく感じていたことを確信に変えることができました。それは本を読むという基本的な活動において2つのタイプがあるということです。札幌医科大学の塚本泰司教授が医学書院発行の加藤晴朗先生著『イラストレイテッド泌尿器科手術―図脳で覚える術式とチェックポイント』の書評を依頼されたそうです。「素晴らしい本なのだが,自分はどうも絵を描くのが苦手です。自分なりに理解する際に視覚には頼っていないのです。僕は視覚ではなく言葉で理解するのです。こういう僕がこの本の書評をするのはふさわしくないかもしれないと思ったのだが,自分の特徴に言及して,なんとか書きました」とおっしゃいました。「先生は本を読むのが速くないですか」と私がうかがうと,「何でわかるのですか。そのとおりです」という答えが返ってきました。
「たとえば小説を読む際に,基本的に視覚に置き換えて読むタイプの人間がいます。イメージを描く操作があるので時間がかかる。そうでないタイプ,つまり言葉のままに理解するタイプはひっかかることなく読み進むことができるので読書が速いと私は考えています。私は視覚で捉えるタイプなので,読むのは凄く遅いです。先生は絵画の鑑賞や,映画を観ることはあまりないのではないですか」「そのとおりです。学生時代には自慢じゃないけど映画を3本しか観ませんでした。絵画もゴッホが好きなのですが,ゴッホの絵自体が好きなのではなく,ゴッホをめぐるストーリが好きなのです」「それは自分の耳を切り取ってゴーギャンに差し出した話などですね」「そうです」
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