書評
「解剖を実践に生かす―図解 泌尿器科手術」―影山幸雄 著
大家 基嗣
1
1慶応義塾大学・泌尿器科学
pp.631
発行日 2010年8月20日
Published Date 2010/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102093
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手術は記録を通して客観性を持つのではないだろうか。手術記事では個々の症例でどのような手技がどのような時間軸で施行されたかが記録され,第三者が読んで手術の過程がわかるように記載されている。これとは別に,手術を行う医師は,自分自身の手術の習熟のために,手術記事に記載するにはあまりに主観的な「手術ノート」を作り,先輩の医師に習ったこと,今後改善すべき点などを詳細に記載し,後生大事に持っていることが多いのではなかろうか。手術前にノートの記載とスケッチを眺めながらイメージを描き,手術に臨む。手術の終了後は加筆を行い,ノートの「改訂」は繰り返されていく。この地道な過程こそが上達への定石であり,この記録を通して,先輩の医師は後輩に技量を伝授してきたのではないだろうか。個々の症例では手術は1回きりである。なんとしてでも全力を尽くさなければならない。より良い手術を継続的に実践するためには,手術自体の客観性を担保しなければならない。そのためには,学会で勉強し,意見を交換するだけでなく,手術書あるいは文献を紐解き,常に自らの手技に批判的な視点を持つ必要がある。
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