書評
―清水和彦・黒川幸雄 責任編集―「理学療法MOOK 13 QOLと理学療法」
大橋 ゆかり
1
1茨城県立医療大学保健医療学部
pp.686
発行日 2006年8月15日
Published Date 2006/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102556
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リハビリテーションにおいてはいうに及ばず,理学療法領域でもQOLの向上が目標に掲げられるようになって久しい.しかし,理学療法士としてQOLに立ち向かおうとすれば,困惑を覚える人も多いのではないだろうか.それは,1つには本書の冒頭でも述べられているように「観測する者がどのような視点・事象で観測するかによって,QOLは蜃気楼のように輪郭も持たず,位置も定まらない」からであり,もう1つには理学療法とQOLの直接的な結びつきが見えにくいからだろう.
本書の第1章「QOLとは何か」は第1の疑問への答え,すなわちQOLの輪郭やリハビリテーションにおける位置づけを示しながら,QOLの理念を大きく捉えて解き明かす章である.第2章「QOLの評価」ではQOL評価に用いられる18種類の既存の尺度が紹介される.しかも,各尺度に関する情報入手先が付記されているという親切な構成だ.また,新たなQOL尺度開発の手順が論じられ,玄人向きではあるが興味深い.第3章「理学療法の実践とQOL」は,前述の第2の疑問への答え,すなわち理学療法はいかにしてQOL向上に介入できるかに取り組んだ章である.ここで取り上げられるのは,脳血管障害,脊髄損傷,運動器疾患,呼吸・循環障害,高齢者,小児を始めとする13の障害領域における実践である.各領域においてQOLを評価するための指標,QOLと直結する障害の特徴,介入上の重要事項,満足度を高める生活スタイルなどが,その領域のスペシャリストによって解説される.
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