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書評 ―著:影山 幸雄―解剖を実践に生かす 図解 泌尿器科手術
大家 基嗣
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1慶應義塾大学・泌尿器科学
pp.348
発行日 2011年4月1日
Published Date 2011/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412102876
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手術は記録を通して客観性をもつのではないだろうか.手術記事では個々の症例でどのような手技がどのような時間軸で施行されたかが記録され,第三者が読んで手術の過程がわかるように記載されている.これとは別に,手術を行う医師は,自分自身の手術の習熟のために,手術記事に記載するにはあまりに主観的な「手術ノート」を作り,先輩の医師に習ったこと,今後改善すべき点などを詳細に記載し,後生大事に持っていることが多いのではなかろうか.手術前にノートの記載とスケッチを眺めながらイメージを描き,手術に臨む.手術の終了後は加筆を行い,ノートの「改訂」は繰り返されていく.この地道な過程こそが上達への定石であり,この記録を通して,先輩の医師は後輩に技量を伝授してきたのではないだろうか.個々の症例では手術は1回きりである.なんとしてでも全力を尽くさなければならない.より良い手術を継続的に実践するためには,手術自体の客観性を担保しなければならない.そのためには,学会で勉強し,意見を交換するだけでなく,手術書あるいは文献を紐解き,常に自らの手技に批判的な視点をもつ必要がある.
おそらく著者はより良い手術を求める過程で,自らが集積してきた詳細な術中のスケッチを通して技術を磨いてきたのだと思う.著者は東京医科歯科大学の木原和徳教授とともにミニマム創手術の確立に多大なる貢献をしてきた.本書では膜の解剖を徹底的に理解し,これ以上の解析は無理であろう,あるいは手術にはそれ以上必要はないであろうというレベルまで考察して泌尿器科手術に応用している.この考察はミニマム創手術の確立に必要な過程であったのかもしれない.
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