書評
「図解 泌尿器科手術」―影山幸雄 著
村石 修
1
1聖路加国際病院泌尿器科
pp.728
発行日 2010年9月20日
Published Date 2010/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102114
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本書は,著者影山幸雄氏が自己の豊富な手術経験に基づいて理解した外科解剖と,その解剖学的知識を駆使することで到達し得た最良の手術手技をイラストで伝えようとする実践的な手術書である。記された内容はすべて著者が実際に行っている手術手技であり,長年の経験から得た細かなコツから思いがけない失敗に対する対処法まで,著者の手技を正確に伝えようとするものである。
日ごろ滞りなく行われている手術も場面・場面を細かく分解すると,「次に現れてくる術野をイメージして決断された操作の連続」といえる。手術に携わる者が「術者の手が止まってしまった」と表現する場面は,術者が次の理想的な術野とそこに至る手術操作をイメージできないで困っている状態である。誰でも初心者時代に経験した記憶があろう。本書に多用されているイラストは,単に手術の手順を伝えるだけでなく,手術の進行に合わせて術者がイメージすべき次の場面を教えてくれる。エキスパートの手術ビデオを見て同じ手技で行おうとしても実際に執刀する場面でつまずくことが多いのは,静止画像的な次の術野をイメージし難いことが1つの理由だと考える。手術ビデオを静止画像に分解したような本書のイラストが,今までの手術書になかった学習効果を発揮すると期待できる。また,熟練した医師が若い泌尿器科医に手術を教えようとする場合の解説書としても最適であろう。
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