書評
「解剖を実践に生かす 図解 前立腺全摘術」―影山幸雄 執筆/吉岡邦彦,近藤幸尋,蜂矢隆彦 執筆協力
松山 豪泰
1
1山口大学大学院・泌尿器科学
pp.943
発行日 2013年11月20日
Published Date 2013/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413103359
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本書はこれまでの手術書とは全く異なる前立腺癌外科治療のためのチャート(海図)である。本書の付録として,手術の重要な部分の動画をオンラインで視聴できるが,書籍では動画収録部分はもちろん,動画に収められていない部分についても美麗なイラストで明示されており,ともすればビデオ動画のみではよくわからない操作手順やコツが初心者にもわかりやすく解説されている。しかもビデオ動画でもわからない血管神経の走行もイラストに描かれているため,剝離や切開の際,注意すべき局所解剖が理解できるようになっている。
著者が小切開前立腺全摘術のエキスパートであることは,多くの読者がご存じのことと思うが,自己の術式にこだわらず,腹腔鏡下およびロボット支援前立腺全摘の術式も詳細な解説図とともに掲載しているところも,本書の特筆すべき点であろう。ビデオ動画を見る限り,他の術式に比べロボット支援前立腺全摘術に一部の利があるようにも見えるが,本書の意図するところは単なる術式の優劣の比較ではなく,読者がいずれの術式を選択した場合にも役立つ汎用性を追求していることは明らかである。また,本書の第1章「手術に役立つ臨床解剖」では,前立腺癌外科治療の究極の目標であるtrifecta(癌根治,尿禁制,男性機能温存)を達成するために必要な,エキスパートによる神経解剖や恥骨前立腺靱帯に対するさまざまなアプローチ法が詳細に解説されている。本書は,これから前立腺全摘術を開始する若手泌尿器科医やさらなる技術の向上を目指す中堅泌尿器科医が,前立腺癌外科治療という暗礁の多い海を航海するためのチャート(海図)となることであろう。
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