書評
—Clemens Faust 著 太田 幸雄,元村 宏 訳—脳外傷後遺症
荒木 千里
1
1京都大学
pp.776
発行日 1959年9月1日
Published Date 1959/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200842
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脳外傷後遺症は外科医の頭痛の種であつて,精神病学者の協力なくては,外科医だけの手には負えない。外科医の苦手とする精神病理学的な問題が非常に密接にからんでいるからである。それでこの問題を精神病学の立場から取扱つたわかり易い参考書が要望されていたのであるが,手頃のものがなかつた。本書はそういう意味で大変いい本だと思う。
これ迄外傷後遺症のヒステリー的,神経症的色彩が強調されていて,それが外科医を途方に暮れさせたのであるが,本書ではそのような心因性病態よりも,脳の器質的変化の方が重視されているので,外科医にも理解し易い。著者は『一般的にいつて第二次大戦では芝居じみた誇張的なヒステリー様の病像は非常に少くなつた』といい,又『ひどい詐病は殆んどない』ともいう。
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