交見室
PSAは前立腺癌をスクリーニングしていない?
岩室 紳也
1
1社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター
pp.634-635
発行日 2008年7月20日
Published Date 2008/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101546
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前立腺癌の病期Dでも一定割合でPSAが4.0ng/ml以下の症例が存在し1),PSAがすべての予後不良の前立腺癌の早期発見に寄与しないことは多くの泌尿器科医が臨床経験から実感している。日本泌尿器科学会の教育講演でもPSA低値前立腺癌の重要性が取り上げられた2)。日本泌尿器科学会編集『前立腺がん検診ガイドライン』3)では「PSA 4.0ng/mlを基準値とした場合の感度は80~82%」としているが,前立腺癌検診のインフォームド・コンセントに不可欠な,PSAのcutoff値を4.0ng/mlとしたときの特異度(前立腺癌がない人を陰性と判断する確率)と敏感度(前立腺癌がある人を陽性と判断する確率)に関する記載がない。
Thompsonら4,5)はPSAが3.0ng/ml以下かつ直腸診で異常がなかった8,575人のうち,7年間の経過観察中に要精密検査となった人を含め,最終的に5,587人にPSAの測定と前立腺生検を行い,PSAの特異度と敏感度が算定された(表1)。PSA 4.1ng/mlをcutoff値とすると,特異度が93.8%と疑陽性率は低いものの,敏感度が20.5%と見落とし率が80%近かった。また,Thompsonらは前立腺生検を受けた人の21.9%を前立腺癌と診断している。日本人男性の60歳代で21.7%にラテント癌が認められ6),欧米と日本での剖検例における前立腺ラテント癌の頻度差は,罹患率の相違に比較して小さいことが知られている7)。
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