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前立腺癌は男子高齢者の代表的な悪性腫瘍である.欧米諸国においては罹患数,死亡数ともに高く,重要ポストについて社会を支えている60歳代から70歳代にかけて,罹患数のピークがあることから前立腺癌への対応は社会的問題にまで発展している.特に米国においては,男子悪性腫瘍のなかで罹患は第1位,死亡は第2位である.わが国の国民の寿命が延び,しかも,米国型の生活習慣(特に食習慣)に馴染むようになれば,前立腺癌の脅威に曝されるであろうことを日本の代表的な疫学者の平山雄博士は16年前に指摘していた1)(図1).その指摘どおりに,前立腺癌の罹患率,死亡率は増加を続けている.一般的に癌の予防としては,第1次,第2次,第3次予防策があるが,前立腺癌においては明確な発癌機序・原因もわからず,また末期癌を根治させうる起死回生の治療法をもたない現在,「早期発見・早期治療」の第2次予防策に頼らざるを得ない現状にある.幸いなことに,われわれは前立腺癌の優れた腫瘍マーカーであるPSA(prostate specific antigen,前立腺特異抗原)を手中にしている.PSAは外分泌腺である前立腺に存在する分泌蛋白であり,セリンプロテアーゼに分類される蛋白分解酵素である.ほとんどの前立腺癌細胞はPSA産生能を有するので,ひとたび前立腺癌が発生し癌病巣の器質的,機能的構築の乱れが生じると,PSAは癌病巣より血中に移行し,PSAの血中濃度が上昇する.このような性質を利用して,前立腺癌があるか否かの診断が可能になり,現在,前立腺癌のスクリーニング(検診)に応用されている.また,PSA検査は前立腺癌治療効果の判定や経過観察にも有用であり,スクリーニング・マーカーとしてのみならず,モニタリング・マーカーとしても重用されている臨床検査である.
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