交見室
PSAによる前立腺癌検診で発見される前立腺癌と前立腺ラテント癌の違いについて
岩室 紳也
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1(社)地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター
pp.72
発行日 2008年1月20日
Published Date 2008/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101336
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WHOは,生前,臨床的に前立腺癌の徴候が認められず,死後の剖検により初めて前立腺癌の存在を確認した症例はラテント癌と分類している1)。和田2)は,生前に泌尿器科的処置を受けていない283例の解剖症例で検討し,ラテント癌は年齢階層別に40歳代で6.7%,50歳代12.1%,60歳代21.7%,70歳代34.7%,80歳以上50.0%と報告している。全国各地で実施されているPSAによる前立腺癌検診の報告の中で,年齢階層別に前立腺生検実施数と診断された前立腺癌数が記載された報告3~8)を収集分析した結果,生検を受けた2,486人中の年齢階層別前立腺癌有病率は,和田が示した前立腺ラテント癌の発生予測率とほぼ同等であった。生検で発見された前立腺癌が,生検受検者中のいわゆるラテント癌(臨床的に前立腺癌の徴候が認められず,生検により初めて前立腺癌の存在を確認した症例)である可能性が示唆された(表1)。
一方でPSA検査による前立腺癌検診について否定的な見解を述べている厚生労働省の研究班9)も,「PSA検査は,前立腺がんの早期診断をする上で有用な検査である」と報告している。しかし,PSAが治療を必要とする前立腺癌をスクリーニングしているとすれば,生検群では一定割合存在するいわゆるラテント癌に加え,治療を要する前立腺癌と合わせ,より高率に前立腺癌が診断されるはずとの疑問が浮かび上がった。
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