検査データを考える
PSAと前立腺癌
飯泉 達夫
1
1帝京大学医学部泌尿器科
pp.473-476
発行日 2000年5月1日
Published Date 2000/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905369
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はじめに
わが国における前立腺癌の発生頻度は,欧米に比べ1/3〜1/4程度とされている.しかし,生活の欧米化,高齢化の進行とともに患者数は著明に増加しており,その増加率は全固形腫瘍中第1位となっている.それに伴い,前立腺癌を早期に発見する重要性が高まり,男性の壮年期以降の健康診断に前立腺の触診や前立腺特異抗原(prostatespecific antigen;PSA)の測定を加える場合も増えてきている.
PSAは1979年にWangらによって初めて分離・精製された分子量33,000の糖蛋白であり,前立腺上皮に局在する.その後の研究でPSAはキニン・カリクレイン(kinin-kallikrein)系に属するセリンプロテアーゼ(serine protease)であることが判明している.また,PSAは血清中ではPSA分子だけのfree PSAとPSAにいくつかの蛋白が結合した形で存在することが明らかにされている.しかし,現在測定可能なものはfreePSAとPSAの酵素活性を抑制するアンチキモトリプシン(anti-chymotrypsin;ACT)と結合したACT-PSAの2つである1).
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