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1.女性前立腺
女性前立腺は17世紀のオランダ人組織学者Graafにより命名されたが,一般的には19世紀のアメリカ人産婦人科医SkeneにちなんでSkene's paraurethral glandと呼ばれることが多い1,2).筆者らは一貫して女性前立腺の呼称を提唱してきた.この努力が実り,2001年解剖学用語に関する合衆国国際委員会(The Federative International Committee on the Anatomical Terminology;FICAT)が開催され,今後組織学用語集に女性前立腺(prostata feminina)を掲載することに合意に至った.
発生学的には男性同様,尿生殖洞から分化する.スロバキア女性の前立腺の平均重量は5.2g,尿道平滑筋層内に存在して,全周に渡って広く尿道を取り囲む.構造も男性と変わりなく腺上皮,導管上皮からなり,多くの導管が尿道に開口し70%以上は遠位尿道,特に尿道開口部に集中局在している(図1)3).Peroxidase antiperoxidase法(PAP),Biotin -streptoavidin peroxidase法(BSP),Biotin -streptoavidin -alkaline phosphatase法(BASP)いずれの免疫組織染色においても,PSAは表層分泌上皮細胞胞体に濃染され(図2),さらに分泌細胞,基底細胞,導管細胞表面にも局在が認められる.特に表層からは多くのPAS陽性ジアスターゼ抵抗性成分,さらにプロテイン1,前立腺特異的酸性ホスファターゼ,水解酵素,脱水素酵素などを分泌,局所炎症制御,免疫に機能すると推定される4,5).今後,標準化による表示値の統一に問題は残すが,高感度測定法により,健常者女性血清において,最高値は0.9ng/mlにも及ぶことが明らかにされている6).これは男性の基準範囲に近似し,女性においても血中PSAは主に女性前立腺由来と推定される.これまでの光顕,電顕所見,局所産生分泌成分,あるいは前立腺癌,前立腺肥大,前立腺炎など病理組織像を総合すると,女性前立腺は単なる痕跡組織ではなく内分泌,神経内分泌機能をつかさどる泌尿生殖組織と断言できる7~11).
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