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はじめに
近年,わが国では前立腺癌患者の増加が著しく,2025年には男性固形癌で第1位になると予測されている.その理由として,過剰な脂肪摂取など食生活の欧米化や,高齢者の増加が挙げられる.また,前立腺特異抗原(prostate specific antigen,PSA)が前立腺癌の腫瘍マーカーとして検診などで普及してきたことも患者の増加に寄与している.
一方,PSAスクリーニングが進んでいる米国では,PSA検査の年齢制限が発表された.その理由として,初期診断された症例の実に97%が早期癌であり,治療の必要がない潜在癌までも過度に治療している可能性があることと,さらに前立腺針生検による感染などの有害性などが考慮されている.その結果,55歳未満あるいは70歳以上の男性に強くPSA検査を勧める有用性は低いとの判断がされた.しかし,その考え方はわが国に当てはまるものではない.それは,筆者らの統計結果でもわかったことであるが,初期診断での70%が早期癌,30%が局所浸潤癌や転移癌と進行癌の割合が高く,米国とは大きな違いが存在するからである.つまり,日本の転移癌症例は米国の約10倍であり,日本においてはまだPSAスクリーニングの普及が進んでいないといえる.早期前立腺癌の治療には前立腺全摘術や放射線治療(密封小線源治療や強度変調放射線外照射,重粒子・陽子線外照射など)が適応とされている.米国では早期癌の割合が高いため,1990年以降の前立腺癌の死亡率は低下傾向を示している.したがって,いかに効率よく早期癌を診断するかが重要な点である.
早期癌では,直腸診で硬結を触れないPSA高値の所見で,前立腺針生検で癌陽性の病理診断となる症例が増えている(臨床病期:cT1c).針生検は通常,12~16本程度を前立腺全体に定点的に刺入する系統的生検を行うが(図1),癌陽性率は40数%前後と高くない.その最大の理由は,癌病巣の同定が画像上難しいからである.生検時には経直腸的超音波検査を行いながら,生検針の位置を確認するのみであるが,筆者らは以前から,第二世代の超音波造影剤であるソナゾイド®を用いた造影超音波法(contrast enhanced ultrasound,CEUS)を行っており,癌と前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia,BPH)の鑑別,さらには標的生検の有用性を得ている1).
FDG-PET(fluorodeoxyglucose-positron emission tomography)は尿路系腫瘍には適していないとされているが,CT画像との融合によるPET-CTでは前立腺癌病巣の同定が可能になってきた.本稿では,その画像解析と生検結果について述べる.近年,MRIが生検前の前立腺癌同定に使用されて癌陽性率を向上させているので,筆者らの使用結果も交えながら文献的考察を加える.
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