特集 泌尿器科外来ベストナビゲーション
8.そのほか
【多発性囊胞腎】
89.腹部圧迫症状が著しいにもかかわらず,腎機能障害を伴わない多発性囊胞腎の患者です。対処と処方について教えてください。
繁田 正信
1
,
田村 亜紀
1
,
角西 雄一
1
1国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター泌尿器科
pp.311-313
発行日 2008年4月5日
Published Date 2008/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101472
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1 診療の概要
腎臓に囊胞を多発する疾患の中で,多発性囊胞腎は常染色体優性遺伝型多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)と常染色体劣性遺伝型多発性囊胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease:ARPKD)に分類される。ARPKDは20,000人に1人発症し,原因遺伝子が第6番染色体短腕に存在するPKHD1である。主に呼吸不全,腎不全により死亡し,10歳まで生存する可能性が51%と極めて予後不良な疾患である1~3)。一方,ADPKDは遺伝性腎疾患の中で最も頻度が高く,約1,000~4,000人に1人の頻度で発症する1~3)。原因遺伝子は第16番染色体に存在するPKD1と第4番染色体のPKD2があり,前者が約85%を占める1~3)。加齢とともに囊胞が両腎で増加し,進行性に腎機能が障害され,70歳までに約50%が腎不全に至る1)。囊胞の巨大化により腎の容積が増加するが,腎容積の増加速度が早い症例は腎不全に移行しやすい4,5)。腎囊胞が巨大化する理由は不明であるが,腎臓内の動脈の平滑筋の肥厚により血管内腔を圧迫し,腎の虚血を招き,そのため血管新生が誘導され囊胞の巨大化を促進するとの仮説もある6)。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.