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8.そのほか
【水腎症】
90.無症候性の水腎症の成人患者です。対処と処方について教えてください。
岩村 正嗣
1
1北里大学医学部泌尿器科
pp.314-316
発行日 2008年4月5日
Published Date 2008/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101473
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1 診療の概要
水腎症とは,尿が腎盂に停滞し,その結果,腎盂や腎杯に拡張をきたした状態をいう。腎盂からの尿排泄を障害する機転としては,尿路の閉塞による通過障害と,尿を能動的に下部尿路へ輸送するために必要な腎盂・尿管壁の運動障害が挙げられる。尿路閉塞の原因には,尿管腫瘍や尿路結石,尿管狭窄,尿管結核など尿管そのものに起因するものと,腎囊胞や交差血管,後腹膜線維症,後腹膜の腫瘍性病変などによる尿管外からの圧迫に起因するものがある。また,腎盂・尿管壁の運動障害は,壁内の平滑筋組織の異常により壁の緊張低下や蠕動運動が障害されて惹き起こされる。
水腎症の臨床症状は,無症状なものから仙痛発作や消化器症状を伴い急性腹症を呈するものまで多彩である。水腎症に伴う疼痛は腎盂内圧の上昇に起因するが,一般的に痛みの程度は内圧の高さとその上昇速度に比例しており,内圧が高いほど,また上昇速度が速いほど強い。すなわち,尿の排泄障害が高度かつ急激に惹起されたものであるほど重篤な疼痛を呈する。しかし,腎盂内圧の上昇速度が極めて緩徐な症例では,腎盂内圧の高さにかかわらず無症状,あるいは軽微な疼痛のみで経過することがあり,注意が必要となる。片側腎の腎盂内圧上昇が長期に及ぶとvasodonstrictorであるthromboxian B2の分泌促進やvasodilatorであるprostaglandin E2の分泌低下をきたし,糸球体輸入細動脈の血流低下により腎機能の低下を招くことが知られている1)。さらに尿細管やボウマン腔の拡張や腎乳頭の壊死,間質の線維化が進行すると,腎機能障害は不可逆性となる。
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