特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
8.そのほか
【多発性囊胞腎】
90.腹部圧迫症状が著しいにもかかわらず,腎機能障害を伴わない多発性囊胞腎の患者です。対処と処方について教えて下さい。
武藤 智
1
,
堀江 重郎
1
1帝京大学医学部泌尿器科
pp.325-327
発行日 2005年4月5日
Published Date 2005/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100298
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1 診療の概要
1.疫 学1)
多発性囊胞腎は両側の腎の皮質,髄質に多数の囊胞を形成し,また実質の萎縮と線維化を伴う疾患で,常染色体優性遺伝をする囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)と,常染色体劣性遺伝をする囊胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease:ARPKD)に分類される。ADPKDは約1,000~2,000人に1人に発症する遺伝性腎疾患のなかで最も頻度が高い疾患であり,疾患遺伝子PKD1,PKD2がクローニングされている。ADPKDは以前はPCKあるいはPKDと呼称されてきたが,現在ではADPKDと呼ばれることが一般的である。ADPKDの本邦の推定患者数は約30,000人であり,透析患者全体の3~5%を占めている。
2.ADPKDの病態
ADPKDの診断基準を表1に示す。最近,厚生省進行性腎障害調査研究班で診療ガイドラインが作成された。一側の腎にのみ囊胞が多発する場合はADPKDではない。腎囊胞の多発と,腎実質の萎縮,線維化により機能ネフロン数が減少し,60歳台までに患者の半数は終末期腎不全へと進行する。一方,腎機能の軽度低下以外,日常生活に支障なく経過する患者も多く存在し,古い教科書にあるようなADPKD患者は,結局,透析になるという見方は正しくない2,3)。囊胞は,腎のネフロンの約1%で発生するに過ぎず,残りの尿細管の萎縮と線維化の程度が腎不全の進展を規定する。したがって,大きい囊胞腎でも腎機能が保たれていることもある。
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