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8.そのほか
【腎梗塞】
88.突然の腎部疼痛・肉眼的血尿で腎梗塞が疑われる患者です。対処と処方について教えてください。
繁田 正信
1
,
田村 亜紀
1
,
角西 雄一
1
1国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター泌尿器科
pp.308-310
発行日 2008年4月5日
Published Date 2008/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101471
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1 診療の概要
腎梗塞は本幹,分枝などの場所に関係なく,腎動脈のいずれかの部位の血流が塞栓や血栓,あるいは外傷などにより途絶し,その末しょう支配領域の腎実質が虚血状態となり,さらには壊死した状態である。成因として,他臓器で形成された血栓が原因となる塞栓症と,腎動脈で直接形成された血栓が原因となる血栓症に分類されるが,塞栓症の頻度が腎梗塞全体の70~80%を占める1)。前者の原因疾患として心臓の弁膜症や心房細動などが,後者の原因疾患として粥状硬化や動脈瘤などが挙げられる(表1)。
腎梗塞の病態は,腎動脈の血流が急速に低下,もしくは遮断されるために起こる腎実質の虚血性変化であり,通常の体温下では60~90分で不可逆的な障害が生じ始める。被膜や周囲組織,腰椎,尿管の血管から,わずかながらも側副血行を受けてはいるものの,腎動脈本幹が完全閉塞をきたすと,3時間以内に血流が再開されれば腎機能が回復するが,3時間を超えると重篤な機能障害を残す2)。発症から診断,治療までをいかに短時間に行えるかが,治療の成否を決めると言える。その一方で,発症頻度が低いことや症状が非特異的であるため,剖検例で腎梗塞は1.4%に認められるにもかかわらず,生存中に腎梗塞と診断されたのは,わずか0.014%にすぎない2)。また初診時の正診率は30%と低く,診断までに48時間以上経過している症例は48%にのぼるなど3),治療効果のある急性期には発見されにくい疾患である。
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