特集 泌尿器科外来ベストナビゲーション
1.尿路・性器の炎症性疾患
■非特異性感染症
【精巣上体炎】
18.精子侵襲症または慢性精巣上体炎が疑われる患者です。診断のポイントと鑑別および対処について教えてください。
古屋 隆三郎
1
,
田中 正利
1
1福岡大学医学部泌尿器科
pp.66-67
発行日 2008年4月5日
Published Date 2008/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101394
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
1 診療の概要
精子侵襲症は,報告例も少なく一般的には発症頻度の低い疾患と思われるが,剖検例における頻度は1.4~4%とも報告されている。日常の診療においては,同様の症状を呈する慢性精巣上体炎のような疾患と診断されて治療されることも多いのではないかと推察される。精子侵襲症は,精子肉芽腫症(spermatic granuroma)と同義であり,精子が精巣,精巣上体あるいは精管周囲の間質に逸脱し,炎症性細胞の浸潤により肉芽腫を形成したものである1)。1921年にWeglin2)が外傷性精巣上体炎および淋菌性精巣上体炎に合併した症例について報告したのが最初である。本邦では鈴木3)が1959年に83例をまとめているが,以降の報告例は少なく,2002年までに15例の報告があるのみである。約30%の症例で,外傷,性感染症,精巣・精巣上体炎,結核,または精管結紮の既往がある。近年の化学療法の普及によって,炎症性疾患の診断で精巣上体摘出を行う機会が減少したことも,精子侵襲症の報告数が減少した一因ともされる4)。
発生部位は,精巣上体尾部が60~70%と最も多く,左右差はないとされる。腫瘤の大きさは比較的小さなものが多いものの,なかには稀であるが6cm程度の大きいものも報告されている。発症年齢は20~72歳で平均40歳であり,性活動の活発な年齢に発症が多い。実際は,術後の病理組織学的所見により確定診断されることが多いとされる。慢性精巣上体炎などの診断で内服治療を開始するも,治療に抵抗性であれば,精巣上体腫瘍との鑑別という意味も含めて,外科的切除(精巣上体摘除術)を考慮する。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.