特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
1.尿路・性器の炎症性疾患
■非特異性感染症
【精巣上体炎】
19.精子侵襲症または慢性精巣上体炎が疑われる患者です。対処と処方について教えて下さい。
吉田 利夫
1
1日本大学医学部泌尿器科
pp.70-71
発行日 2005年4月5日
Published Date 2005/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100227
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1 診療の概要
精巣上体が短期的に疼痛を伴い腫脹する急性精巣上体炎以外に,精巣上体に何らかの硬結があり,軽度の疼痛が持続するもの,あるいは無痛性のものを総称として慢性精巣上体炎と呼ぶが,これらのなかには細菌性やクラミジアによる急性炎症が治療によっても十分に寛解せず,遷延しているものをはじめ,当初から慢性症として診断されるものあり,精子侵襲症もそのなかに含まれる。鑑別すべき疾患として結核性精巣上体炎,精液瘤,精巣上体腫瘍(adenomatoid tumor)などがある。
精子侵襲症に関しては,1921年にWeglin1)が外傷性精巣上体炎および淋菌性精巣上体炎に合併した報告が最初であり,病因においてははっきりとした定説はないが,感染,外傷,性器の閉塞などの既往が認められたとの報告もあり2),最近は精管切断後の合併症として注目されている。無症状のものを含めるとその発生率は15%程度に認められるという3)。症状としては,精巣上体の腫脹と,疼痛が最もしばしばみられ,腫脹部位は尾部が多いといわれているが,その逆の報告も存在する4)。組織学的には間質内精子の侵襲とこれを取り巻く肉芽組織の発生であり,初期には精子が多数みられ,間質組織や破壊された精細管周囲に侵入している。あとには精子は大食細胞や組織球に食され,いわゆる食性現症(sperminophagia)がみられる5)。
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