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患者 76歳,男性。
主訴 左側腹部痛,肉眼的血尿。
既往歴 特になし。
現病歴 1999年9月に胸部X線写真(図1),CT(図2)上,異常陰影を指摘され,左肺癌の診断にて胸部外科にて左上葉切除術,リンパ節郭清術を施行された。病理診断は未分化腺癌,pT1,pN2,M0,stageⅢAであった。2000年10月に左側腹部痛,肉眼的血尿を訴え当科を受診した。
理学的所見 腹部に腫瘤などは触知されなかった。左側腹部叩打痛を認めた。PS 0。
検査所見 血液一般・生化学検査では異常は認められなかった。IAP 626μg/mlと高値であった。尿沈渣では赤血球99以上/HPF,尿細胞診はclassⅠであった。
画像所見 排泄性尿路造影検査では左尿路は造影されなかった。超音波検査では左腎下内側腹側に47×41mm大の腎実質より高エコーで内部不均一な充実性腫瘍を認めた(図3)。腫瘍による尿管圧迫のために,水腎症を認めた。単純CTでは腫瘍は同密度で辺縁不整であった。造影CTでは造影効果は少なく,不均一に造影された(図4)。境界は不明瞭であり,一部腸腰筋への浸潤が疑われた(図5)。左腎動脈造影検査では腫瘍部血管は乏血管性であった(図6)。胸部外科によると肺癌の局所再発は認められなかった。
以上より,転移性腎腫瘍または原発性腎腫瘍を疑い2000年10月31日に経腰的左腎摘除術を施行した。
手術所見 腫瘍は腸腰筋筋膜,腹膜と癒着が強固なために,癒着部も含め合併切除した。腫瘍は腎被膜を越え腎筋膜内に浸潤していた。割面は灰白色で硬く,腫瘍被膜は認められなかった(図7)。肉眼的に尿管への浸潤を認めた。
病理組織 未分化腺癌(図8)で,左肺癌の病理組織像と類似していることから肺癌の腎転移と診断された。
臨床経過 術後経過は良好であり,症状の改善が得られた。術後,本人の希望もあり,補助療法など行わずに退院した。2001年1月に施行されたCTにて,左腎摘出部に局所再発を認めた。その後,胸部外科にて化学療法が施行されるも効果なく,2001年2月28日(腎摘出4か月後)死亡した。
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