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ハーバード大学医学部皮膚科学講座におけるレジデントの研修(その1)
Ackerman, Mihm教授のレジデント時代
1970年当時のマサチューセッツ総合病院(MGH)には全米から優秀な皮膚科レジデントが集まってきており,極めて多彩な顔ぶれの若者がいた.これらの多くの人々は後に皮膚科学の種々の分野で指導者として国際的に活躍することになったのであるが,彼らの中で印象に残った人々について述べたい.
1969年には皮膚病理で有名なDr WA Bernard,Ackermanが皮膚科レジデントとしてFitzpatrick教授の指導下で皮膚科を,WH Clark教授の下で皮膚病理,ことにメラノーマと色素性疾患の研修を行っていた.彼はその後,ニュヨークへ移ったが,非常に個性的なレジデントであったらしく,私が最初にMGHに行ったときにまず多くの人々にいわれたことは,Dr Ackermanがいかに個性的で,しかも活動的な人だったということであった.Ackerman教授は1年後ニューヨークへ移った.同時期にDrMartin Mihmが皮膚科レジデントを終了し,また兵役を終え病理にレジデントとして在籍し,皮膚病理に携わり,MGHで働いていた.Ackerman, Mihm教授はともに現在世界の皮膚病理の指導的立場の人となっているが,当時ほぼ同じ時期にMGHで研修し,共通の師から皮膚科学(Fitzpatrick教授),病理学(WH CIark教授)を学んだことは興味深い.私自身,現在も両先生とは個人的に非常に親しく交際させていただいている.両先生はともに独身を守り,そして研究を活動的に行っており,共通して大変デリケートな神経を持ち,世話好きでもあり,また文学・音楽などへの趣味も深い.Ackerman教授はことにシャーロックホームズの文学を好み,またMihm教授はバッハ,ベートーベンなどのドイツ古典派の音楽を好む.一方,両先生はいずれもユニークな個性を有し,研究方法,学会での演説方法,また著作の種類などもまったく異なっている.Acker—man教授は教科書・症例検討の研究が主である.一方,Mihm教授は教科書に加え基礎生物学の研究を行っている.さらに興味を引くことは,両先生の師であるClerk教授に対する研究上での対応の違いである.Ackerman教授はClerk教授の著作を反論の材料としてしばしば用いているが,Mihm教授は逆にClerk教授の考え方をできるだけ導入しようと努力している.
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