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あとがき
本田 哲也
pp.358
発行日 2024年4月1日
Published Date 2024/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412207253
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人間の欲求を5段階に分類する「マズローの欲求5段階説」をご存知でしょうか.人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である,という仮定のもとに,人間の欲求を5段階に理論化したものです.ある段階の欲求が満たされると次の段階の欲求を満たそうとする心理的行動があるそうですが,まず第1段階の欲求は「生理的欲求」です.食欲,排泄欲,睡眠欲など生きるために必須の欲求です.第2段階は「安全欲求」.第1段階の必須の欲求が満たされると,より安心,安全な暮らしの欲求が生まれます.より美味しいものを,より快適な睡眠を,ということでしょうか.第3段階は「社会的欲求」.社会から受け入れられたい,集団への帰属や愛情を求める欲求を指します.第4段階は「承認欲求」.他者から尊敬されたい,認められたいと願う欲求です.これはさらに低いレベルの承認欲求(他者からの尊敬,名声,注目を得ることで満たされる)と高いレベルの承認欲求(自身の技術や能力の習得,自立性を得ることで満たされる)に分かれます.最後の第5段階は「自己実現欲求」です.潜在的な自分の可能性の探究,自己啓発,創造性の発揮など,自分の世界観・人生観に基づいて「あるべき自分になりたい」という欲求,とのことです.
これを皮膚科臨床に無理やり当てはめると,どうなるでしょう.第1段階は皮膚科基礎知識の習得,第2段階はそれをより高いレベルで会得,第3段階は経験症例の学会発表,第4段階は症例報告・臨床研究など論文作成,第5段階はさらにそれらの結果に基づいた新しい医療の創造,とでもなるでしょうか.
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