ステロイド吸入剤を契機とし再発を繰り返した顔面カンジダ症の1例

A case of recurrent candidiasis on the face associated with inhaled corticosteroid

要約　74歳，女性．初診約5年前より金属義歯ブリッジを装着．約3年前より気管支喘息のためステロイド吸入剤を使用していた．2013年1月，下顎左側の瘙痒を伴う紅斑を主訴に受診した．紅斑の真菌学的検査により顔面カンジダ症(起因菌：Candida albicans)と診断した．ルリコナゾールクリーム外用で治癒したが，その後3回再発を繰り返した．皮疹の治療と同時にアンホテリシンBシロップによる口腔内のカンジダの除菌を行ったのち，再発は認めていない．下顎，金属義歯ブリッジ部，金属義歯部，舌表面，唾液から検出した5株について25s-ribosomal RNA遺伝子(rDNA)のタイプ分析とITS領域の塩基配列の決定を行ったところ，株間に遺伝子型の差異は認めなかった．以上より，金属義歯部に付着していたカンジダが，ステロイド吸入剤により口腔内で局所的に増殖し，これが下顎に広がったと考えた．