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あとがき
中川 秀己
pp.360
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204720
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このあとがきが出る頃には皆さん新年度を迎えて,診療・教育・研究に心機一転取り組もうとされていると思います.
さて,今回は診療の「診」という言葉を見直してみたいと思います.皆さん文章に書くときは「患者さんを見る」ではなく,「患者さんを診る」と書かれることが多いと思います.一般には「見る」という言葉が汎用されているのは事実ですが,その「見る」で代表される言葉の1つとして「診る」があります.そのほかにも「観る」などいくつかの言葉がありますが,主なものを拾って,辞書で引くと次のようになっています.診る(シン)という字は「深く見て申す」,視る(シ)は「止まってよく見る」,看る(カン)は「手をかざして見る」,観る(カン)は「ぐるっと見まわす」,監る(カン)は「上からじっと見る」,覧る(ラン)は「じっと眺め見る」でほぼ「監る」と同じ,瞰る(カン)は「高いところから見下ろす」で鳥瞰図や俯瞰という言葉がある.われわれ皮膚科医に最も大切な「視診」という言葉は「止まってよく見て,深く見て申す」という意味になります.すなわち,現代のテレビや新聞などのメディアはキャッチフレーズやレッテルを張ったように人間を評価していますが,「視診」はそれと同じように患者さんを見ることをしないという大切な言葉として捉えられると思います.
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