--------------------
あとがき
中川 秀己
pp.748
発行日 2012年8月1日
Published Date 2012/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412103403
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
医学教育にもグロバリゼーションの波が押し寄せ,見学型・参加型の臨床実習,研究者育成プログラムのさらなる充実・期間延長,卒前・卒後医学教育の一体化,それに伴う医学教育カリキュラムの見直しが迫られており,5年以内には大きな変革がなされるはずである.いずれにしても,豊かな人間性と社会性,倫理観を持った良医を育成していくことが大学に課された義務となっている.
私は今の大学(慈恵)を入れて教育システムに若干の違いがある3大学で医学教育に携わってきたが,医学生と教官の顔がお互いに見えることの大切さを実感している.その上で特に医学生には早いうちから医師としてのモラルと中立性,努力継続性を理解し,実践できるように育成していかなければならないし,慈恵でもカリキュラムのなかにもモラル教育を充実させている.こうした環境下でも守るべき規則を守る,やってはいけないことはやらないという当たり前のモラルが守れない医学生が少しずつ増えてきているのが現実である.私の学生時代を振り返ってみるとモラルを守らないことがあっても,周りの人たちが学生さんだから大目に見てあげようという温かい気持ちにあふれていた.しかし,現在ではそのような雰囲気もなくなってきているので医学生にとっては受難の時代と言えるかもしれない.学生部長として毎年必ず,違反を犯した学生を呼び出しているが,自分自身の経験から,モラル不遵守がどれほど他人に迷惑を掛け,その結果,悪い反動が自分に必ず跳ね返ってくることを実感できるように注意している.モラルの内容を教えるよりも守らない事例を挙げ,その結果がどのように跳ね返ってくるかを教えることのほうが効率的ではないかと考えている.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.