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あとがき
中川 秀己
pp.530
発行日 2015年6月1日
Published Date 2015/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204490
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医療業界に,研究(臨床研究を含む)の捏造,改ざんから始まり,研究費の不正申請・使用,内視鏡手術の死亡例の問題,利益相反,二重投稿など「倫理,倫理」の嵐が吹きまくっています.われわれの大学でも問題が起こるたびに,内部での問題点の再検討,再発防止策についての検討のためのワーキンググループ(WG)が立ち上げられ,規定や指針の再制定が行われています.なぜかWGの委員長をいくつか任せられ,かなりの時間を費やすことになってきています.時間の無駄のような気もしますが,これも人生勉強,忍耐養成と考え,何とか責任を果たすように努めているところです.
臨床研究推進センターとそれを監視するポリス機能を備えた機構を立ち上げるためのWGの委員長を務めていて感じたことは,いわゆる不正と断定された行為を行った人には全く悪意がない(悪意の意識がない)ことです.精神的に甘い(または弱い),社会人としての常識が醸成されていないことが大きな原因となっていることがよくわかりました.構成員の一部にでもそういう人がいると,大学の先輩後輩,所属クラブ,大学院で世話になっていたなどの構成員の人間関係に依存して組織的な不正に発展する可能性が,常に内在しているのです.しかしながら,伝統的に培われてきたこれらの人間関係をすべて否定した組織を立ち上げることは,かえって組織運営に大きな支障を生じます.落としどころが難しいですが,良好な人間関係を保持しながら,守るべき倫理は守るというシステムを作ることになりましたが,そのため講習会や自筆のサインで確認する書類がかなり増えてしまうことになりました.
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