海外見聞記
ラテンアメリカ便り(9)—ブラジル
大城戸 宗男
1
1慶応義塾大学医学部皮膚科
pp.92
発行日 1970年1月1日
Published Date 1970/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200608
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ラテンアメリカを簡単にあらわせといわれたら,人によつてそのいだいているイメージが異るから,例えば人種差別のない移民国で日系人が70万人もいるとか,発展途上中で21世紀の国々とか,軍事革命が日常茶飯時で情熱的な中南米音楽の国,更には密林の中に裸族や人喰い人種がいて探検隊が行方不明になつたりと,その人の趣味がそのまま現われてくるに違いない。
夢を大きくしてくれるのは確かで日本の約60倍もあるブラジルでも世界最大のアマゾン河を含む周辺の緑の地獄ときたら,スクリジュー(水蛇)の大きなのは馬や牛を呑み込み,ある時には幅40mもある河を,この水蛇がせき止めたので殺すのに200人の兵隊が出動して500発の弾丸を打ち込んだ。この死骸は長さ55mあつたので運ぶのに70人の兵隊が縦に並んでしよわねばならなかつたと云う愉快な話もある。小生にラテンアメリカを定義せよと云うなら簡単で,皮膚型及び皮膚粘膜型リーシユマニア症,フランベシア,ピンタ,Fogo salvagem,南アメリカブラストミセス症の大陸としよう。このうちフランベシアは保健省が患者発生地区の住民全員に疾患の有無に拘らずペニシリンの大量投与を行ない,例えば1957年から1960年迄に1600万人以上をコントロールするなどして現在は著しく減少している1)。小生の定義は不完全で既に紹介ずみの蝿蛆症を初め砂蚤,ムクイン(ダニ)等の動物寄生性疾患を落している。
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