海外見聞記
ラテンアメリカ便り(4)—ボリビア
大城戸 宗男
1
1慶応義塾大学医学部皮膚科
pp.858-859
発行日 1969年8月1日
Published Date 1969/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200545
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世界中で学園騒動いや革命が進行しているが,そのアイドルのチェ・ゲバラがキューバに次ぐ実験を何故このボリビアに選んだのかは彼の日記を読んでもぴんとこない。この国も他のラテンアメリカの例にもれず戦争,革命を繰り返えしていたが,1952年初めて社会主義革命が成功し,農地改革,鉱山国有化が実施された。これが反動勢力により徐々に崩壊していくのをアルゼンチンの医大を卒業したてのゲバラはベネズエラ奥地の癩病院を訪れる途中にみている1)。彼の共産革命に関してラテンアメリカ特有の貧富の差より生ずる必然の歴史とみたり2),被支配階級のインディオ解放の人種問題としたりする意見3)等があるが,この国で貧富の差,無知で無力で怠惰な原住民を眼のあたりにすると誰しも現体制に疑問をもつらしい4)。
所がいつこうに何も感じないのが我々一行。この国は戦争続きで男がいなく,サンタクルス市の公園の樹の上から下を通る男めがけて女が降つてくるというのを真に受けてベンチに何時間も坐つていて,人が書いたものはあてにならないと最後につぶやいていたから皆様も旅行記には注意が肝心。ここから120キロ奥地にジャングルを開いた邦人移住地が1955年からできている。
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