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日本の教科書を見ると慢性円板状エリテマトーデス(discoid lupus erythematosus:DLE)の治療はステロイドの外用ということになっているが,タイの皮膚科専門医は,ステロイドの外用は皮膚の萎縮を増長するので,使用すべきではないと述べている.確かにDLEは皮膚萎縮がみられる病変であるので,皮膚萎縮を起こすステロイド外用薬を使用するのは本末転倒といわざるを得ない.では海外ではどんな治療をしているかというと,抗マラリア薬である.日本でも以前クロロキンが使用されたことがあるが,クロロキン網膜症のため,その発売は中止になった.その後海外では網膜症をほとんど起こさない抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)が開発され,DLEに対し世界中で古くから使用されている.この度日本でもようやくヒドロキシクロロキンの治験が始まったが,安い薬のためメーカーは仕方なくやっている.そして,その後押しをしたのは内科である.全身性エリテマトーデスではなく,その皮疹に対する薬であるにもかかわらず,皮膚科学会はまったく関与していない.ある皮膚科の先生にこのことを質問したところ,DLEは命にかかわる病気ではないから良いのだという.皮膚病の多くは命にかかわることは少ないので,命にかかわらない病気に関心がないということは,皮膚科そのものを否定することである.それで本当に良いと思っているのであろうか.それでなくても日本の皮膚科教授は患者の皮膚や血液を採取するのには熱心であるが,治療に関してはほとんど関心がない.一方,治療に関心がある先生はCOI絡みである.海外では安価で有効性・安全性が高い薬が存在するが,日本では不適切な治療薬が少なくない.日本の皮膚科治療は東南アジアより劣っていることを知っているのであろうか.また皮膚病変がみられる全身疾患患者は,皮膚科で治療され,手に負えなくなって内科で尻拭いされている.本当に日本の患者はかわいそうである.
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