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久しぶりに乾癬学会に参加した.相変わらず,生物製剤が華やかで,今後さらなる生物製剤が上市されるという.メトトレキサート(MTX)でコントロールされる重症乾癬患者が少なくないにもかかわらず,生物製剤である.確かに生物製剤のおかげで,皮膚科の売り上げが伸び,病院の科長会でも肩身の狭い思いをしなくなった.しかしこれらの医療費の多くは税金で賄われている.日本では乾癬にシクロスポリン(Cys)が使用されているが,毎年講義をしているバンコクの国立皮膚科研究所で,アラブ首長国連邦の先生から「確かにCysは乾癬に有効であるが,やめるとすぐに再発する.その結果内服が長期に及び,腎障害などの副作用が出る.しかも値段が高い.どうしてCysを使うのか?」と質問されたことがある.では彼らは何を使うかというとMTXで,副作用はほとんどないという.帰国後このことを日本のオピニオンリーダーに言うと,日本人は外国人と違って肝炎が多く,肝生検をしなければならないからと言う.本当かなと思って,日本のリウマチの専門家に聞いたところ,MTXはほとんど副作用がなく,肝生検など全く必要がないと言っていた.ただし稀に間質性肺炎を起こすので,時々胸部X線を撮ったほうがよいが,MTXによる間質性肺炎はステロイドの内服が著効するので,心配することはないと教えられた.また最近皮膚科の専門家からMTXはリンパ腫を引き起こすから,危険だという話を聞く.確かにMTXの長期内服により,MTX関連リンパ増殖性疾患が生ずることがあるが,MTXの投与を中止すると自然によくなる.このことを知らない皮膚科の重鎮は少なくなく,リンパ腫と診断されて抗癌剤治療を受けると死亡することもある.米国の乾癬のガイドラインでは,Cysは重症で免疫不全がない乾癬患者が対象となるが,さらに少なくとも1つ以上の全身療法を行って無効である患者が適用となっている.また副作用のため,1年以上連続してCysを使用すべきではないと記載されている.それにもかかわらず,日本ではMTXの使用を阻止する抵抗勢力が多い.利益相反のためにMTX導入に反対しているのであれば,患者に対する背信行為である.ようやく日本皮膚科学会の一部の先生の努力により,MTXが公知申請される運びとなり,喜ばしいことである.
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