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新研修制度が導入されてから,産婦人科医や小児科医の減少傾向が加速され,このままでは,日本では子どもを産めなくなり,たとえ子どもができてもそれを診てくれる小児科医がいなくなってしまう.そのため日本の少子化傾向は悪化の一途をたどり,将来日本を支える労働の担い手がいなくなる.次にくるものは外科医の減少で,日本にいても外科手術を受けられなくなる.その時になって初めて政府が動き,フィリピンなどの外国人医師に日本の医師免許を与えるようになる(今年からフィリピンの看護師が,条件を満たせば日本でも働けるように法律が改正された).日本医師会が外国人医師の誕生に反対しても,日本政府は患者団体の圧力に屈した形で外国人医師を導入するようになる.そうなれば,安い労働力を利用でき,医療費削減をめざす政府にとっては,まさに思うつぼである.一方,皮膚科医は増え続け,飽和状態となる.その結果,多くの皮膚科医は生き残りのために,美容ビジネスに走ることになる.そしてその資金を支えるのがブラック・マネーである….これは単なる空想ではなく,現実味をおびてきている.新研修制度が始まる前は,産婦人科を希望する者は卒後すぐに産婦人科に入局するため,産婦人科の忙しさ,大変さがわからない.しかし新研修制度では,いくつかの診療科を回るため,どの科は大変で,どの科は楽かを身をもって体験する.その結果,産婦人科を希望する医師は減る.もともと診療報酬が安いのであるから,産婦人科の診療報酬を上げたからといって,産婦人科医が増えることはない.このような単純なことを政府がわからないとは驚きである.一番簡単な解決法は,日本以外の国で行われているように,各科のレジデントの定員を決めて,研修修了者を希望と成績により各科に割り振ることである.自由に診療科を選択できるのは日本ぐらいである.アメリカの医学教育のまねをするのであれば,一部ではなく,レジデントから専門医制度まで,すべての制度を導入しないと不完全と言わざるをえない.
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