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最近のテレビコマーシャルでは多くのジェネリックメーカーが,ジェネリック薬は同じ成分で同じ効果があると宣伝をしている.しかし,厚生労働省はジェネリック薬の処方が増加しないことに業を煮やし,来年4月から処方箋にはジェネリック薬を記載することを原則とし,ブランド薬を処方した場合は,その理由を記載しなければならないという通達を出すということである.確かにジェネリック薬はブランド薬と同じ成分が入っているが,日本のジェネリック薬は不純物が入っていても,薬剤の吸収が悪くても構わないということになっている.最近話題となっている中国製の製品では,不純物や毒物が入っていてもあまり驚かないかもしれないが,医薬品となればことは重大である.一般に薬剤は,それが目的とする臓器に移行して初めて薬効を発揮する.例えば内服薬は消化管から吸収されない限り,薬効を発揮することはできない.そのために,薬剤が有効に吸収されるための製剤化の技術が必要である.外用薬も同様で,主剤の経皮吸収を高めるのも低めるのも基剤の善し悪しで決まり,主剤が同じであっても基剤が異なれば,薬効が異なることはよく知られた事実である.
米国では薬の特許が切れると,ほとんどがジェネリック薬に置き換わる.しかし米国では,ジェネリック薬も臨床試験が必須で,有効性も安全性も臨床試験で検証されている.つまり米国のジェネリック薬はブランド薬と基本的に同じであり,ジェネリック薬の情報も豊富である.それに対しわが国のジェネリック薬は,臨床試験での有効性や副作用のデータがない.厚生労働省はジェネリック薬を処方することによって医療費が下がるといっているが,副作用が増え,有効性が下がれば,さらなる医療費の高騰を招くことになる.そもそもわが国は,先進国の中で医療費が最も低く抑えられている一方で,土建業に対しては最も多くの税金が投入されている国である.これ以上の医療費の削減は医療崩壊を招きかねない.医療費云々は国民の目を欺く方便で,ジェネリック薬の推進は,天下り先の確保のためとしか思えないが,本当のねらいはどこにあるのであろうか.
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