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私事ですが,昨年10月に還暦を迎えました.1年,1年が瞬く間に過ぎて,最早60歳になったのかと思うと,なんだか儚い思いと,多忙を極めていても,これまで何をしてきたのか,これで良いのかという疑念も浮かびます.来年7月で教授就任20年になりますが,日常の些事,依頼原稿に追い立てられ,ドタバタ,アクセクするだけで過ぎてきているようにも感じます.このような感傷的な思いになっているのも,つい先日,東大の玉置邦彦名誉教授が急逝されたことが,私にとって大きな精神的衝撃になったからだと思います.故玉置先生に初めてお会いしたのは,約30年前,先生のご留学先の米国NIH(国立衛生研究所)のラボを訪問させていただいたときでした.以来,帰国後もさまざまな機会にお会いして,いろいろとご指導いただき,先生が佐渡出身ということもあって,とても仲良くお付き合いさせていただきました.先生が日皮会理事長でいらしたとき,私も理事の1人として皮膚科専門医制度関連を担当させていただいたのが,一緒の仕事の最後になってしまいました.先生は,とても温厚な方でしたが,強い意志と信念をお持ちで,多大な研究業績ばかりか,文字どおり日本の皮膚科のトップとして活躍されました.先生は私の数年歳上で,私にとってとても素晴らしい同年代の先輩であり,今後も末永くお付き合いいただくつもりでした.しかし,あまりに突然の訃報で,とてもショックを隠せません.しかしながら,私も定年まで4年半余りですので,責任を果たしていかなくてはとの決意も新たにしています.さて,『臨床皮膚科』に投稿される方々は皮膚科専門医を目指す若い人が多く,投稿される論文を前にしていつも思うのですが,「いい加減な内容」,「文章が稚拙」,「ピンボケ写真」,「文献の書き方がデタラメ」…など,嘆かわしいことも多いのです.もし,そのまま掲載したら,無論『臨床皮膚科』の質を落とすばかりか,その著者の評価も地に落ちてしまいます.ですから,編集委員は皆,真剣に論文を審査して,修正のため著者に返却することも頻繁です.皆さんには,後々,自負できる論文を残していただきたいと思うこの頃です.故玉置邦彦先生のご冥福をお祈りします.
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