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日本皮膚科学会認定「指導専門医」制度がこの4月から始まりました.「皮膚悪性腫瘍指導専門医」と「美容皮膚科・レーザー指導専門医」です.この準備段階のことは本誌60巻12号のあとがきで紹介しましたし,詳しい規則・規則施行細則,修練指針や必要な研修実績のことはすでに日皮会誌に公示されています.しかし,なぜ「指導専門医」が必要なのかという理由はなかなかわかりにくいかもしれません.この制度を作ろうという要因はいろいろありましたが,なかでも皮膚がん治療の問題が最も重視されました.特に,皮膚科学会とは無関係に「がん化学療法」の専門医を作るという動きがあり,もしそうなると,皮膚がんを理解していない化学療法医が皮膚がんを治療したり,皮膚科専門医による皮膚がん治療が制約を受けたりする可能性が危惧されたわけです.悪性黒色腫はもとより,SCC,BCCやPaget病などありふれた皮膚がんでも,一般医による誤診や誤った治療が日常茶飯事であり,皮膚疾患を知らない他科の医師が診療すべきでないと,皮膚科専門医であれば誰でも考えているはずです.皮膚がんを扱うには皮膚科専門医であることが必要条件であると思うわけです.しかしながら,われわれがそう考えて,皮膚科専門医であれば皮膚がんを治療できると主張しても,社会的動向から皮膚科専門医が弱い立場に追い込まれる可能性もあります.そこで,皮膚科専門医を基盤として皮膚悪性腫瘍治療のサブスペシャリティ分野を設け,皮膚科学会としてその専門家(=皮膚悪性腫瘍指導専門医)を養成して,社会にアピールしようというわけです.
組織としては,日本皮膚悪性腫瘍学会・日本皮膚外科学会・日本臨床皮膚外科学会で活躍する皮膚科専門医の先生方を中心に,日本皮膚科学会が運営する方式です.今年になって,日本癌学会・日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会と全国がん(成人病)センター協議会が「日本がん治療認定医機構」を発足し,一応,各領域の専門医取得を前提とするようですが,まだ内容もはっきりせず,これからの状況です.一方,美容皮膚科・レーザーの分野でも,皮膚や皮膚疾患に詳しい皮膚科専門医がピーリングやレーザー治療をすべきという考えに基づいています.しかしながら,いずれの制度も充実するまでにこれから5年,10年を要するものと思われますし,指導専門医になった方々の活躍も重要かと思います.本誌に掲載される論文をみても,皮膚疾患を診療できるのはやはり皮膚科専門医だと思いますし,それが患者さんにとっても有益であるのは無論のことで,医療経済的にもきわめて良いことだと思います.
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