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あとがき
塩原 哲夫
pp.174
発行日 2008年2月1日
Published Date 2008/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412101890
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“強いばかりが男じゃないよ”とは昭和30年代の流行歌の歌詞である.しかし,かつてそんな時代があったとは信じられないほど,今,男性に求められているのは“やさしさ”ばかりである.しかし本当に“やさしく”なるためには“強さ”が必要であり,“強さ”の裏付けのない“やさしさ”は“弱さ”でしかない.
昔,ある若手医師が医局のカンファレンスで,端から見ていても気の毒なほどの叱責を受けたことがあった.あまりに可哀想に思い同情の声をかけたところ,「僕のことを想って言ってくれたのだから」との答えが返ってきた時には,驚くとともに彼はきっと将来大人物になると確信した.これはH教授の若き日の姿である.昔はこのようなやり方で若い人を鍛え,人は強くなっていったように思う.ところが,今は“やさしさ”を求める声に負け,表面上の“やさしさ”のポーズを取りたがる人が多い.本当にその人のことを思えば叱責しなければならない場面で,やさしい言葉をかけてしまえば,その人は“やさしさ”のみを要求する人になってしまう.
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