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日本の治療は欧米ばかりでなく,東南アジアより劣っている(渡辺晋一:日本の皮膚科治療―世界標準治療との違い.皮膚臨床 54:963-971, 2012).これを是正すべき各学会は厚労省に働きかけているし,厚生労働省自らも,日本医学会を通じて各学会に新薬の要望書の提出を求めている.しかし日本皮膚科学会は,何もしていない.私が所属する日本化学療法学会などでは新規の薬剤の申請を学会主導で行い,いくつかの薬剤の保険適用拡大や剤形追加が治験なしで認められている.しかし日本皮膚科学会は,自分の懐にお金が入らない治験には全く関心がない.他の多くの学会が日本の医療向上のために動いているのにもかかわらず,なぜ日本皮膚科学会は何もしないのであろうか.むしろ乾癬治療では,世界標準薬であるメトトレキサートの保険適用を阻止し,海外ではほとんど使われることがないシクロスポリンを守っている.それは日本皮膚科学会が,患者のためではなく,利権団体になっているためかもしれない.実際,日本皮膚科学会の教育講演では,世界標準治療ではなく,利益誘導につながる治療を宣伝していることがある(なかには偽装データもある).より安全で有効な治療法があるのに,それを隠して不適切な治療を患者に提供する医師に教育講演を行う資格があるのであろうか.さらに数年前に日本皮膚科学会は研究だけにとどめておけばよいものを,アトピー性皮膚炎の重症度を判定できるTARCの測定を保険収載するために動いた.そのため,診察しただけでアトピー性皮膚炎の重症度を判定できる皮膚科医の存在意義が失われてしまった.しかもTARCはアトピー性皮膚炎に特異的ではない.また最近は直接鏡検ができない皮膚科医につけ込んだ糸状菌検出試験紙が発売され,利益相反がらみでこの試薬を保険適用にしようという動きがある.直接鏡検で重要なことは,サンプリングする部位である.この試薬は一部のアスペルギルスにも陽性反応を示すため,直接鏡検に替わるものではない.もしこの試薬が保険適用になったら,直接鏡検をしない医師が増え,皮膚科不要論につながりかねない.最近,公益社団法人「日展」では,天の声により入賞者が割り振られていることがわかったが,日本皮膚科学会,少なくとも東京支部では昔から天の声がある.そして天の声が,日本皮膚科学会の利権のために働いている.いい加減に利益相反に基づいた日本皮膚科学会から脱却しないと,日本の皮膚科は基礎研究しか存在価値がないということになる.
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